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生き様を倒すのは生き様 「RUSH」
 
久々に観終わった直後に「本当に見て良かった」と思える傑作だった…



主人公となるのは1970年代から80年代にかけて活躍したF1ドライバーのジェームズ・ハントとニキ・ラウダ。
常に「今日が自分の死ぬ日」と考え続け奔放で刹那的な生き方を貫くジェームズと、知的で冷静で冷徹なニキ。まったく正反対の2人だったが、共にマイナーレースから勝ち上がりF1でワールドチャンピオンを争うほどに成長する。
しかし、ニキが中止を提案したレースでジェームズは強行開催を推奨し、その結果ニキは大クラッシュに巻き込まれる。自らを責めながらも走り続けるジェームズ、その姿を見て再びレーサーとして復帰することを決断するニキ。そしてニキは「不死鳥」と呼ばれた大復活を果たす。


この映画で描かれるのはジェームズ・ハントとニキ・ラウダという2人のレーサーのまさに「生き様」。
ストーリー前半では2人がマイナーレースからF1のトップレーサーに至るまでの数年間が無駄なく展開される。マイナーレースで実績を積み上げ、実力を認められることで少しずつ昇りつめるジェームズ。それに対し、ニキは実績こそ無いもののレーサーとしての技術と知能に絶対的な自信を持っており、徹底した科学的分析と計算でマシンだけではなく自身の立場や環境さえも劇的に改変していく。
2人ともが資産家の家系に生まれながら、自由に生きることを許されたジェームズの周りには常に人が溢れ、逆に家族と絶縁してまでレーサーになることを選んだニキは必要以上の他者との交流を拒んだ。チームも出身地も違えば、人間性も真逆で両者の間に友情も愛情も無いけれど、レーサーとしての敬愛が徐々に生まれていく過程が丁寧に描かれている。

後半からは劇中の時間経過速度は抑えられ、ニキの大クラッシュとそこからの復帰、そしてジェームズとニキの関係の変化が焦点になる。
しかし、「大クラッシュとそこからの復帰」はあくまでニキ・ラウダの生き様の一部に過ぎず、それらを描くためにこのストーリーが作られたわけではない。もしそれらを中心とするならば、後にニキの妻となるマルレーヌとの出会いや関係の発展、クラッシュ後のリハビリにより多くの時間を割いて最後は復帰戦とともに結末を迎えたはずだと思う。そこにジェームズは必要無い。
けれど、ストーリーはメロドラマ的展開や夫を支える献身的な妻といった方向に行くことはなく、むしろそれらは排除され、すぐにニキの復活へつながる。ここで観客はニキの決断や思考に疑問を抱くことが無いのは、前半でニキ・ラウダがどれだけレーサーとして誇り高い人物であったかを描けているから。だからこそ、それ以上の説明は必要無く、マシンに乗って走り出すニキを見届けるだけですべてが完成してしまう。

知的で頭の回転が速いニキは言葉で表現することが出来る。しかし、刹那的な生き方の最前線で走り続けるジェームズには決して言葉では語らせず、細かい仕草やクセで心理状態を描き、最後には嘔吐までさせた。そして大クラッシュからニキが復帰した時、ジェームズはそれを語る言葉を見つけられず、ニキもそれを表現する態度や仕草を見つけられない。
それでも彼らは言葉や態度を超えた2人だけの関係を見つけ出す。それが「世界最速」という称号であり、ニキに勝たなければワールドチャンピオンになれないジェームズ、ジェームズを超えなければワールドチャンピオンになれないニキ、2人は何も語らず、何も示さず、ただレース直前に手を上げて互いにあいさつする。それだけしか方法はなくとも、それだけで十分なほどに互いを敬愛していた。
そして流れ始める重厚なメインテーマ曲、自身の体調とレース状況を瞬時に計算し、圧倒的な運転技術と判断力で次々と先行車を抜き去るニキ。これで泣かない理由が無い。

この物語はニキの一人語りで始まり、ニキの一人語りで終わる。そのどちらもがジェームズについてのものであり、ニキに彼を認めさせ、語らせることでドラマは盛りがった。
けれど、そのジェームズの刹那的な価値観と態度に感化され時に感情的になるニキは非常に人間的であり、ニキが語るジェームズを通してニキもまた描かれている。実際の2人の仲は良かったそうだけども、映画ではレーサーとしての敬愛以上のの感情は無く、最後まで友情も愛情も芽生えないまま平行線で終わる。ただそれはどこまでも一直線に伸びるものではなく、一定の距離を保ちながらも二重螺旋のように複雑に関わり合い、やはり同じ軌道を描き続けている。

まさに「生き様を倒すのは生き様」
 

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

【2014/03/02 02:16】 | 映画感想 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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