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置き去りにされた少年の怒りが銃と化す 「泣く男」
 

今年の自分の映画ランキングでは確実にベスト5には入るであろうと期待した韓国映画「泣く男」を見てきた。
予告映像の時点で私のやってほしいことや、やりたかったことが存分に取り入れられていることは分かっていたし、実際の内容も映画として面白いとかを通り越えて殿堂入り級だった。





ただ、イ・ジョンボム監督作としては前作に「アジョシ」があるから、それと同じものを期待していると賛否が分かれるとも思う。
おそらく一番の違いは、「アジョシ」は悪の組織に誘拐された少女を救うために隣に住むおじさんが究極の善意で立ち向かう普遍的な感情を扱っていたのに対し、「泣く男」は観客の感情移入を拒むように終始主人公の感情を描くことなく展開されるので、いわば主人公の生き様を見届けることを要求されること。
「泣く男」も「アジョシ」と同じ比較的単純な善悪の闘争のように見えて、実のところ悪が悪のまま悪と戦うという構造になっている分、そこで好みが分かれてしまうのではないかと。


「泣く男」の主人公はマフィアからの暗殺指令の最中に成り行きで無抵抗の少女を殺害。様々な事情が入り込んでその少女の母親も暗殺するように指令を受ける。これによって主人公が少女の母親に近づく理由は出来上がるけども、そこでの二人は「少女を殺した男」と「娘を殺された母親」、「母親に捨てられた息子」と「娘を愛した母親」という関係のみで、二人が交わるのは男女の愛情ではなく”少女の死”だけという距離感。
主人公が見せる感情は「怒り」のみ。それも少女の母親に対するもの。少女の死を受け入れず、自らも死を選ぼうとする母親に主人公は自分の母親を重ねる。行き詰まりの世界に取り残された母親は自ら命を断った。母に愛されたかった主人公はそれを「自分を置き去りにして一人だけ逃げ出した」と考え、少女の母親にも生きることを求める。もしかするとそれは自分を置き去りにした母への間接的な復讐だったのかもしれない。行き詰まりの世界で苦しみ続けろと。


チャン・ドンゴン演じる主人公は冷静かつ冷徹でありながら、その怒りは一瞬にして沸点に達する爆発力があり、その爆発力は銃撃戦での火力へと昇華される。予告にもある中盤のアパートでの銃撃戦は凄まじく、映画的な記号としての銃撃戦ではなく一撃必殺の武器として機能するので素晴らしい緊張感。
今年は「キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー」が驚くべき完成度のアクションを披露して世界的大ヒットとなったけども、それと同等以上のレベルにあると思う。「キャプテン・アメリカ」の場合はキャプテン・アメリカがスーパーソルジャーなので敵は数での勝負に出たし、最大の敵であるウィンターソルジャーもやはりスーパーソルジャーで、そこでの超人バトルが見どころになっていたけど、逆にその超人的なパワーと無敵の盾で無理矢理に状況を打破してしまうこともあった(それが魅力でもあるんだけども)。
「泣く男」の場合は実力や装備が拮抗した殺し屋と殺し屋の戦いであり、当然、腕でも足でも一発命中すれば大ダメージとなって動きが鈍る。その上で次の一手を反撃として確実にやり返す殺し屋たちの死闘。手の内を知り尽くした者同士としてどちらが一手先を読めるか、体のどこにでもいいので一発を当てられるかという素早い攻防がめまぐるしく展開されていて素敵だった。

主人公たちは殺し屋として最初から銃火器を装備しているのでアクションの比重は銃撃戦が大きいものの、「アジョシ」に続く肉弾戦やナイフアクションも健在。「アジョシ」では相手に可能な限り苦痛を与えるために行われていた「腱と動脈を斬って動けないまま失血死させる」というアクションを「泣く男」ではより機械的に、ただ敵を排除するために行い、主人公の冷徹さを象徴させている。
また、殺し屋だからこその”慣れ”を利用した行動もあり、人混みに紛れた敵を一瞬で見分ける方法が面白い。

残酷描写はスプラッター映画ほどではないにしろ、銃撃を受けた手が弾け飛び千切れた指が床に転がるといった場面も多い。一般人である少女の母親が床一面に広がる血の中を素足で歩くことに強い嫌悪感を示すことと相手の返り血を顔面に浴びながらショットガンを連射する主人公との対比も良い。


主人公の最大の敵となる男を演じるのはブライアン・ティー。「ワイルドスピード」では横暴なチンピラ、「ウルヴァリン」では情けない政治家とイマイチ活躍しなかったものの、今回は兄貴分としての愛情を見せながら全力で殺そうとする暗殺者を好演。愛憎入り乱れる過去を提示する役割もある。
「アジョシ」で悪役兄弟の兄を演じたキム・ヒウォンも出演していて、今回も「小物界の大物」と言える小悪党を熱演。
ブライアン・ティーの部下である外国人傭兵は銃を構えているだけで画になる迫力と説得力があり、圧倒的な火力で主人公を追い詰めていく。


問題としては前半1時間近くが主人公の心境の変化を描くためのドラマ部分となっていて、中盤まではオープニング以外にアクションはほとんど無いということ。その点では「アジョシ」は暴力を駆使して敵から情報を得て追跡する展開だったので、緩急が上手だった。
また、ラストシーンが唐突で、その内容がそこに入れられるべきかというとそうでもなく…。しかし、主人公の感情を一切描くことなく展開したことで最後のエレベーターでの作戦による結末が成立したので、それ以前にあの場面を入れてしまうと観客が主人公に感情移入する隙が出来てしまうので難しいところ。


「アジョシ」は悪に誘拐された少女を救うことで自らに対して抱いていた罪の意識から一つの解放を得る男の生き様を描いた映画であり、「泣く男」は自分を決して許されない存在とした上で他者が下そうとする自らが望んだ方法以外での決着を凄まじい暴力で排除していく男の生き様を見届ける映画だった。
【2014/10/21 02:57】 | 映画感想 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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